憲兵だった父の遺したもの
       父娘二代、心の傷を見つめる旅 

  
          倉橋綾子 著  高文研 定価 1500円+税

 

 著者の倉橋綾子さんは、地元で「手をつなぐ戦後世代の会」をつくるとともに、各地の市民運動にも積極的に参加され、日本の戦争責任や憲法の問題に取り組んでいらっしゃいます。
 
 本書は、かつての戦争中に憲兵だった父が、死の床から「俺が死んだらこれを墓に彫りつけてくれや」と言って、中国人への謝罪の言葉を刻んだ小さな紙切れを娘・倉橋さんに手渡す、それから始まった倉橋さんの「旅」――遺言を託した父の実像に迫る旅、父に代わって中国の人に謝罪する旅、そして自分自身を見つめ・探しあてる旅――が綴られています。
 
 本書を読んで、かつての日本の侵略戦争が、1945年8月15日で決して終わったのではなく、戦後生まれの私たちの中にも息づいており、今の問題なのだということを教えられます。
 「家族と自分自身の闇の内までさらけだしたことは、こうした家族を再び作らぬためであり、自分のあとに続く若い人たちの明るい未来につながるのだ」という思いを受けとめてがんばらなければと思います。

 「戦争は悪いものだと思わない」という若者が増えていると聞きます。そういう若者にこそ是非読んでいただきたい本です。

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物語 日本国憲法第九条
       戦争と軍隊のない世界へ

        伊藤成彦 著   影書房   定価 2400円+税

 
本書は、著者が一九九八年にドイツのオスナブリュック大学に客員教授として招かれて講義したものを圧縮し、その後二年間の状況の変化・発展を折り込んで、お話しされたことをまとめたものです。
 「戦争放棄」「戦力不保持」を謳った日本国憲法の制定過程が、敗戦後の直接の過程のみならず、アメリカで起こった戦争違法化の運動や明治の自由民権運動との関係で論じられるとともに、戦後、憲法第九条がどのように空洞化されていくのかの過程も論じられ、本書は、現行日本国憲法の歴史を学ぶ上で、格好の書です。
しかも、内容も大変わかりやすく書かれており、これから憲法について学ぼうとする人にもお勧めの書です。
 
一読して、「平和憲法」といわれる現行日本国憲法が、単に二度と侵略戦争をくり返してはならないという反省にたってつくられた(もちろん、このこと自体に大変な重みがあるのですが)というばかりでなく、多年にわたる、そして数え切れない多くの人々の自由と民主主義を求める運動とその犠牲の上に立ってつくられたものであるということを教えられ、あらためて、憲法の改悪を決して許してはいけないという思いを強くします。
 是非、一読を。
侵略戦争と性暴力
        軍隊は民衆をまもらない

         
       津田道夫 著  社会評論社  定価 2600円+税
 
本書は、著者が一九九五年に著された『南京大虐殺と日本人の精神構造』(社会評論社)の姉妹編。
 「南京大虐殺」をはじめとした日本の中国侵略戦争における皇軍による残虐行為、特に性暴力が何故になされたのかを認識論・言語論や性関係論、「天皇社会」論といった著者独自の観点から迫った渾身の書です。
 全編をつうじて、いまなおかつての日本の侵略戦争の戦争責任=戦後責任を果たさない日本の状況を著者自身の問題として主体的に受けとめる著者の誠実さと「新しい歴史教科書をつくる会」をはじめとした「歴史改ざん派」にたいする著者の怒りが伝わってきます。
 また、現在、「テロ根絶」の名のもとにアフガニスタンへの無差別攻撃が正当化されたり、「北朝鮮の脅威」があおられ「不審船」や「テロ対策」のためなら「有事法制も必要」とされる風潮を批判的に考える上でも実に示唆に富んだ書であると思いました。(全272頁・2002年6月刊)
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