『安心のファシズム―支配されたがる人びと』

        斎藤  貴男 著
         2004年7月刊
         岩波新書    735円(税込)

  「ケータイ」や「自動改札機」、「防犯カメラ」、極々身近にあるハイテク機器が、私たちを縛り監視する道具となる。そして私たち自身も人間としてではなく「息をする財布」として、扱われていく。それらを巧妙に私たちに強制する人々と、それをたやすく受け入れてしまう人々。

 2001年の「9・11」以降、さらに大きく動きはじめた、「恐怖」と「安心」を操るあらゆるシステム、メカニズムを紹介し、それを支える、強制する人々の側の理論と、受け入れてしまう側の人々の心理を分析、解説しています。
 権力中枢にいる人たちが、どのように私たちを操り、どのような社会を作ろうとしているのかがはっきりと見て取れます。事態は想像以上のスピードで進んでいます。

 エリートと称される人たちの「自由」とは、単に金もうけの「自由」で、私たち庶民の考えている「自由」とは根本的に違うものなのだと思います。これも本書にも出てくる「ニュースピーク・新語法」なのか。(去年、ジョージ・オーウェルの『1984年』を読んでおいてよかった。)でも、揶揄している余裕は残念ながらありません。うかうかしていると、いま私たちの持っている「自由」という言葉の意味も徐々に染め替えられてしまうかも。
 必読の書です。
『ゴマメの歯ぎしり――平和を探して生きる』

        早乙女 勝元 著
         2004年7月刊
         河出書房新社 1890円(税込)
 

 本書は、早乙女さんご自身が「戦後自分史」だと書かれているように、朝鮮戦争、ベトナム戦争、そしてイラク戦争など、戦火の絶えない中で、どういう思いで作品をつくったり、行動してこられたのかがつづられています。
早乙女さんも東京大空襲を体験されたのですが、悲痛な体験をされた方々の声を集め「東京空襲を記録する会」を結成されたこと、米兵に村を包囲され、ほとんどの村人が虐殺された中でかろうじて生き残った「ベトナムのダーちゃん」との出会いとそれを日本の人々に知らしめたことなどなど…。先の大戦はもちろん、ベトナム戦争さえ知らない世代の私にとって、戦争とはこういうものだということをあらためて教えてくれます。

 「ゴマメの歯ぎしり」と聞くと、大きな力の前に歯が立たず悔しがっている姿を思い浮かべますが、本書を読むと、一貫して戦争で犠牲になる人々の立場に立って、さまざまな運動の先頭で奮闘されている早乙女さんの姿が伝わってきます。早乙女さんが強調されている「すべての物事は一人から始まる」――早乙女さんが行動する際のモットーとされているこの言葉は、新たな戦時下に生きている私自身のものでもなければならないと感じます。
とりわけ、いま米軍がイラクの人々を無差別に爆撃し、何百、何千もの「ダーちゃん」が生みだされていることに胸が痛むし、しかしこの米軍の侵略行為や自衛隊派兵が「人道支援」「テロ掃討」としてまかり通っている中だからこそよけいにそう思います。
是非、ご一読を。     
『別冊・世界――もしも憲法9条が変えられてしまったら』

         2004年10月刊
         岩波書店   1000円(税込)

 
全体が緑を基調としたイラストに彩られた装幀は、書店の雑誌コーナーでも目を引き、一人でも多くの人に手にとってほしいという発行者の意気込みを感じます。

 また、章構成も

 第1章 憲法って何だろう?
 第2章 もし9条が変えられたら?
 第3章 なんで改憲?
 第4章 9条を活かして世界で生きるには?
 第5章 憲法の力――私はこう思う

 と、改憲問題を考える際の視点が網羅され、しかも、それぞれの論文がコンパクトにまとめられ、読みやすくなっています。しかしながら、中身については、読んでいて、おや?おや? と感じるものもあります。
例えば、落合恵子さんと長谷部恭男さんとの対談の中で、長谷部さんが「一言でいうと、多様な価値観を持っている人が、それでもお互いを認め合って共存し、社会生活の便宜やコストを公平なかたちで分かち合おう、その枠組みをつくっていく……。それが、立憲主義です。」(三三頁)というところ。
昨今、憲法問題の集会で良くいわれる「憲法とは権力を縛るもの」という立憲主義についての説明とはずいぶん違うようだが、果たして良いのだろうか?……そんなわけで、おおいに肯くばかりでなく、ときに首をひねりながら読み、今後の運動の課題について考えさせてくれる一冊だと思います。    
三重からの風・ブックレット第9号
『よくわかりました「劣化ウラン兵器禁止条約」が必要なこと』


         2004年6月刊
            A5判74頁 一冊600円


 

三重県在住で、反改憲ネット21会員でもいらっしゃいます宮西俊秀さんが主宰されている「地方自治ベースキャンプ」が、新しく右の題名のブックレットを発行されました。
「国際法主体としての市民」と題した猿田佐世・弁護士の講演(今年二月)と「劣化ウラン兵器と核サイクル」と題した小出裕章氏の講演(同五月)の記録が収められています。

 また、下の『朝日新聞』名古屋本社版「声欄」に掲載された宮西さんの投書にありますように、宮西さんは憲法前文や九条を広めるために精力的に朗詠をされており、どんな集まりでも希望があれば朗詠をして下さるとのことです。
 ブックレット及び朗詠のお問い合わせは、反改憲ネット21事務局まで。

『2003年の365日』 

       橋本  勝 著  ラピュタ新書  1260円

本書は、風刺漫画家の橋本さんが、さまざまな出来事を一日一枚のイラストに文章をつけて一年分をまとめたシリーズ第三弾です。イラク戦争、原発や核問題、環境問題、住基ネット等々、毎日毎日書き続けている橋本さんのエネルギーに圧倒されます。
 私が特に印象に残ったのは、「8・17政治漫画家」の次の文章です。イラク戦争を現地で取材中、米軍の「誤射」で死亡したロイターのカメラマンと「自宅で仕事の出来る政治マンガ家」とを対比させながら、「本当に時代と向き合うマンガを描くとはどういうことなのかという厳しい問を自らにぶつけざるをえない」、と。ここから、今の時代と格闘する橋本さんの熱い思いが伝わってきます。

 この橋本さんの自問は、私自身にも問われることです。橋本さんのイラストを見ていると、過去の歴史とアナロジーしながら生起する事態の本質に迫る努力をしなければ、と感じます。イラク全土への大規模空爆が始まった3月22日のイラストは、ベトナム、アフガニスタン、そしてイラク、さらには20××年の北朝鮮にたいする米の空爆の光景がずらっと並べられたもの。どの国の民衆の頭上にも、同じ「FREEDOM(自由)」の形に並んだ米軍の爆弾がアメのように降りそそぐ。米軍によって虐殺された子どもを抱えて泣き叫ぶ父親のイラスト(11月30日)。イラク戦争は「テロとの戦い」だとブッシュは強弁するが、もはや「テロ」ではなく、イラクの人々は「無法な占領」にたいして「レジスタンス」に起ちあがっている――という文章が添えられています。報道管制が敷かれる中で、このようにとらえるためには、常に自分の感覚や立場を見つめ直さなければいけないのだとひしひしと感じます。
 橋本さんの『20××年の365日』シリーズは、2010年まで毎日続けられるとのこと。そのころのイラストは、ブッシュの戦争も憲法改悪もSTOPして、笑顔に満ちた私たちが描かれているように、いま頑張らねば!!

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