いまこそ有事関連三法案を廃案に!
「有事法制と憲法改悪に反対するつどい」全発言

 (2002年6月30日 北区赤羽会館大ホール)


  主催  :民主主義と平和憲法を守る文京連絡会
       日本国憲法をくらしに生かす会
       憲法擁護・非核平和を進める中野区民の会
       改憲とあらゆる戦争法に反対する市民ネットワーク21


私たち反改憲ネット21は、憲法擁護・非核平和を進める中野区民の会、日本国憲法をくらしに生かす会、民主主義と平和憲法を守る文京連絡会との共催で「いまこそ有事3法案を廃案に!有事法制と憲法改悪に反対するつどい」を開催しました。会場の北区赤羽会館大ホールには150名余が参加。4時間以上にわたって活発な討論を行いました。

※以下はつどいにおいての全発言を記載したものです。

主催者あいさつ 弓削達さん(反改憲ネット21世話人)
・元山俊美さんのメッセージ
・基調講演 「有事法制論議の現在と問題点」――山内敏弘さん(一橋大学教授)
・有事法制と運動の行く手についておおいに〃だべる〃120分
 1.パネリストより問題提起
    山内敏弘さん(一橋大学教授)
    河上暁弘さん(中央大学客員研究員)
    田島 治さん(日本国憲法をくらしに生かす会)
    相原龍彦さん(憲法擁護・非核平和を進める中野区民の会)
    川田正美さん(民主主義と平和憲法を守る文京連絡会)
  *コメンテーター
    弓削 達さん(反改憲ネット21世話人)

 2.参加者交えおおいに〃だべる〃


 3.集会アピール

午後二時過ぎ、司会が開会を宣言して「つどい」が始まりました。

司会)私たちは、有事三法案が日本の海外での武力行使を可能とし、日本がアメリカとともに行う戦争に国民も総動員していく法案だととらえて反対してきました。
 そして「陸・海・空・港湾労組二十団体」が中心となって大きな反対運動がつくられるなか、この取り組みに私たちも積極的に参加し、がんばってまいりました。
 こんにち、有事三法案は継続審議になろうとしていますが、いまこそ有事三法案を廃案にする、たとえ継続審議になっても絶対制定させないための運動をいまからつくっていこうという趣旨で、本日このような「つどい」を開催しました。2月24日に「反改憲ネット21」が主催する集会にきていただいた市民団体の方々と、5月29日には国会にたいする要請行動を行い、そして今回、四団体共催で集会を開催する運びになりました。市民団体相互の絆も強くしながらいま運動をすすめているところです。
 きょうの「つどい」を成功させるために最後までよろしくお願いします。

主催者あいさつ 弓削達さん(反改憲ネット21世話人)
 有事法制廃案を求める方向こそ正しい。ますます〃だべり〃を!

弓削)三年前に始めた「反改憲ネット21」の集まりに、いまだにこのように沢山の方々のお集まりをいただいて、次第に大きくなっていくという喜びを感じています。喜びと申しますのは、私どもが「反改憲ネット21」の運動を始めたときは、そんなに長く続かないのではないかと思っていました。ところが、だんだんとわれわれが危惧していた方に世の中が移ってしまった。そして、まさかと思っていた有事法制が国会に上程されまして、いまやわが国最大の問題になっています。
 この有事法制を廃案にするというのはわれわれの一致した考えであります。そして、次第にわれわれの求める方向が、これこそ正しい方向であると悟らされるに至っています。
 この会は、はじめの頃は若い方が思っていることを言いあう会にしようじゃないか、ということで〃だべる会〃にしました。若い方の〃だべり〃を尊重したから、この会が次第に大きくなってきました。きょうここでも、ますます〃だべりの会〃を尊重したいと思っています。
 〃だべる〃勢いがみなさんの中から出てくる限り、有事法制などが現実になって、日本が喜んで戦争の中に入っていくことはあり得ないと思います。こういう元気を、みなさんが語り合う中で出していただいて、きょうの会を終わらせたいと思います。きょうは、平頂山事件の裁判の問題でもご報告があります。どうかみなさん、終わりまで充分に議論をたたかわせてお帰りいただきたいと思います。よろしくお願いします。

有事法制反対の輪をさらに大きくするために多くをつかみとってほしい
――元山俊美さんのメッセージ


司会)きょうは、いつも「つどい」でお話しをお願いしている元山俊美さんが、体調を崩されて欠席されています。メッセージをいただいていますので読み上げます。
 「私が言いたいことは『有事法制Q&A』に書いています。是非それを読んで下さい(笑い)。有事法制ができたら、反対しようにもできなくなる。「平和」といっただけでやられます。暗黒の時代を経験した自分には手にとるように分かります。きょう、集会に参加された方は、危機感を持っているからこそ、ここに来られたと思います。私はうれしく思います。どうかこの輪をさらに大きくしていくために、きょうの「つどい」で多くのことをつかみとっていただきたいと思います。」

 

 

 

 

 

 

 



基調講演 「有事法制論議の現在と問題点」――山内敏弘さん(一橋大学教授) 

今回は、長い運動の第一ラウンド。決して気を緩めてはいけない

山内)この間の有事法制論議のなかで、マスコミに少なからず出ている意見に「慎重審議をお願いしたい」とか、「法案に曖昧な点があるので、きちんと明らかにすべきだ」というものがあります。そのような議論の意味をどう評価するのか
なども含めて話してほしい、ということなのでお話ししたいと思います。
 有事三法案は今国会では成立しないと思いますが、仮に今回、継続審議や廃案になろうとも、秋の臨時国会以降、装いを新たにした有事関連法案が上程されると思います。しかも、その場合は政府・与党にとっては今回は一つの挫折ですから、その挫折を二度と繰り返さないかたちでの修正をしてくるであろう、つまり、民主党と協議し、民主党の執行部が納得する有事関連法案をつくる方向に転換しないとも限らないわけです。そういう状況を見ると決して気を緩めるわけにはいかない。ある意味で、これからがもっとしんどいたたかいになると思います。

 今回の法案は、色々な問題をはらむ法案です。「曖昧なところがいっぱいある」「肝心な点が先送りにされている」等々という問題をはらんでいただけに、われわれやマスコミも「曖昧だ」「もっと慎重審議が必要」と叩くことができたと思うのです。しかしこの次、政府・与党ないしは防衛当局が、場合によっては民主党や自由党とも協議して出してくれば、廃案に追い込むのは厳しいと予測すると、今回、継続審議あるいは仮に廃案に追い込むことができても、これはまだ長い運動の第一ラウンドで負けなかったということでしかないということです。

有事法案の「曖昧さ」は、〃意図した曖昧さ〃

山内)今回の法案は、様々な問題点があったことは間違いないです。
 例えば、「武力攻撃事態」という概念が非常に曖昧だというのは、その通りだと思うのですが、その曖昧さが、政府の法案作成者の不用意な稚拙さにもとづくものとは必ずしも言えない、むしろ意図した曖昧さがそこに込められていたと思います。すでに指摘されていますが、「予測されるに至った事態」もあえて「武力攻撃事態」の中に含めたことが、そしてこれまで法律用語としては存在しなかった「武力攻撃事態」という概念を新しく導入したところに、今回の「武力攻撃事態法案」の最大の特色と一つの本質があるのです。そこで企図されたことは、首相をはじめとする政策決定者の政治的裁量を最大限に行使できるようにすること、そしてこれによって「周辺事態」とのドッキングを可能ならしめるということです。

「周辺事態法」の制約をクリアすべく登場した「武力攻撃事態法案」

山内)1999年に「周辺事態法」が制定された時には、政府は集団的自衛権の行使はできないという建て前だったので、政府・防衛当局には次の三つの制約が付されていました。
1.「周辺事態法」において武力行使はできない。
2.さらに、自衛隊は戦闘地域にいくことはできず「後方地域」における「支援活動」をする。
3.しかも、武力攻撃と一体となる「支援活動」はできないので、例えば武器・弾薬等の提供はできない
という制約でした。
しかし、このような制約は、日本の政府・防衛当局だけではなく、アメリカにとっても大きな桎梏と感じられたがゆえに、翌2000年の「アーミテージ報告」では有事法制の制定を含むところの「新ガイドラインの勤勉な履行」と同時に、「集団的自衛権の行使」をも日本に要求してきました。そういう意味において「周辺事態法」の一つの制約をクリアすべく登場してきたのが今回の「武力攻撃事態法案」だと考えると、「武力攻撃事態」の概念の曖昧性は単に立法者の稚拙な立法技術のせいではなく、まさに〃仕組まれた曖昧性〃であったと私は思います。
「テロ対策特措法」にもとづいてインド洋になお出動している自衛隊が、「悪の枢軸」発言をふまえてアメリカが現実的にイラクを攻撃した時に、直ちに対応することができる。しかも、今回の法案が成立すれば、日本自身にたいする武力攻撃のおそれがある場合ととらえて「個別的自衛権の行使」の名のもとに武力行使ができるようになるのです。

信用できない「国民の安全の確保」

山内)もう一つの特色は、今回の法案のタイトルの一つに、「国民の安全の確保」が書かれるに至ったということです。政府は、しばしば「武力攻撃事態」に際して国民の安全を確保することが必要だからこういう法律をつくるのだ、と述べていますが、問題は「国民の安全の確保」の実態がどうかです。この点についても、民主党を含めて「国民の安全を確保するための具体的な法制は、二年後に先送りされているからまずい」という批判がでました。しかし、これも単に立法準備が間に合わなかったというだけではなくて、立法者は最初からそういうものをだして実態が国民に広く知られたら「武力攻撃事態法案」を通すことができないということで、第一段階ではださなかったのだろうと思います。これにたいして、マスコミも含めて、一体どのように国民の安全を確保するのかが不明確なままではこの法案を全面的に受け入れるわけにはいかない、という批判がでてきましたが、これは全くその通りだと思います。少なくともどういう内容なのかをはっきりと示さない状態で、「国民の安全の確保」と書かれているからといって、これを信用するわけにはいかないと思います。
 
 そもそも、根本的な疑問は、もし政府・防衛当局が本当の意味で国民の安全をも確保することを考えているならば、どうして自衛隊法第三条の自衛隊の基本的任務を規定したところで、国民の安全を確保することが自衛隊の任務だとうたわないのか。私は半分冗談で、〃自衛隊の任務は国民の安全を確保することだ〃という条文が自衛隊法三条の改正条文としてでてきたならば、場合によっては自衛隊の存在を認めても良いと言うのですが、そうはならない。今回、あわせて自衛隊法の改定案が出されていますが、自衛隊法103条をはじめとして自衛隊の行動を容易ならしめ、その支障になるような現行の諸々の行政法規や市民法規は適用除外にする。同時に、それに支障のある国民の権利は制限する。こういう内容になっています。だから、「武力攻撃事態法案」に「国民の安全」という言葉が書かれたからといって、それを真に受けることはできない。
 しかも重大な問題は、「国民の安全」に先立って「国の安全」と書かれている。この「国民の安全」と「国の安全」との違いや、どうして一番最初に「国の安全」が書かれているのかという問題等について、煮詰めた議論、あるいは政府の説明は何らなされていません。「反改憲ネット21」の方で、迅速で的確なかたちでつくられた『有事法制Q&A』で「国の安全」というのは、決して国民の安全と同じではないと説得的に書かれていますが、私たちとしてはその点を批判的に検討していくことが重要だろうと思います。

業務従事命令拒否に罰則をもうけなかったのは、国民の強い抵抗を避けるため

山内)それとの関連で、指摘しておかなければならないのは、有事における防衛出動命令が発せられた事態において自衛隊の行動に支障が生じてきた場合には、国民の権利を制限するだけではなく、邪魔をした非協力の国民にたいして罰則を科する、とはっきりと定めたことです(自衛隊法124条、125条、126条の規定)。この根拠は、最終的には「公共の福祉」につきるわけです。
 そして、今回の法案においては立入検査を拒否したり保管命令に従わなかった人たちについては罰則規定があるが、業務従事命令違反にたいしては罰則規定はない。一体どうしてなのか。簡単な理由は、最初から業務従事命令拒否についても罰則規定をもってくると、国民の抵抗が強いから今回は避けたのだと思います。それはもちろん、政府・防衛当局は国会等の答弁で正面から言わない。「業務従事命令については、当該事業者の専門的な知識や経験や能力を用いて、能動的かつ主体的に行っていただくもので、罰則をもって強制的に業務に従事させたとしても充分な命令の効果を期待できない。場合によっては自衛隊の任務遂行に支障を及ぼしかねない。だから業務従事命令については罰則規定を科さない」のだというのが一応の説明ですね。もっともらしく聞こえるかもしれませんが、私はためにする説明でしかないと思います。
 
 5月16日に、国立市の上原市長が内閣総理大臣にたいして44項目の質問書を出したのですが、この中に将来、「業務従事命令違反者にたいして罰則規定を設けるつもりはないのか」という質問がありましたが、それにたいして一切回答がない。代わりにいま申し上げたことをよこしてきました。ついでに言いますと、44項目の質問書をだして、そのうち15項目については一切回答なしです。これは国立市のホームページに掲載されていますので、ご覧いただければ分かります。このような、最も私たちの人権に関わることについて回答をよこさない。ということは、それ自身が一つの回答を意味しているのではないかと思います。

徴兵制合憲論への論理的必然性をはらむ罰則規定の明記。「公共の福祉」による正当化を問題にすることが大切

山内)立入検査拒否や保管命令違反にたいして罰則を科することが「公共の福祉」という理屈で正当化できるとなれば、業務従事命令拒否にたいして罰則を科さない理由は、憲法上導きだすことが困難になってくる。現にそのような議論を、憲法調査会で自民党議員が展開しています。その自民党議員の話によれば、いわゆる有事に際して国民の権利制限を罰則をもっておこなうことが正当化されれば、業務従事命令やさらには徴兵制も、これを違憲とする根拠はもはやなくなるのではないかということです。ちなみに、政府は従来から徴兵制は憲法違反だと言っていますが、1980年の鈴木内閣の答弁書でその根拠を次のように述べています。「徴兵制は、わが憲法の秩序のもとでは、社会の構成員が社会生活を営むについて、公共の福祉に照らして当然に負担すべきものとして社会的に認められるものではないのに、兵役といわれる役務を提供を義務として課される点にその本質があり、平時であると有事であるとを問わず、憲法一三条、一八条などの規定の趣旨からみて許容されるものではないと考える」。
 
 この答弁では、憲法九条が徴兵制違憲論の根拠とはされていないことに留意して下さい。一三条の「公共の福祉」の考え方を変えれば、そして今回の法案の基礎にあるような「公共の福祉」論をとれば、業務従事命令にたいする罰則規定を科することが正当化されるだけではなく、徴兵制違憲論の根拠を失うことにもなりかねないわけです。あとは、そのような業務従事命令違反にたいして罰則を科するかどうか、あるいは国防の義務を法律のレベルで科するかどうか、これは政策レベルの問題であって法律のレベルではもはやなくなってきます。したがって、今回の有事関連三法案のなかで、罰則をもって国民の権利を制限すると明記したことは、大変重大な意味をもっています。徴兵制合憲論にいく論理的必然性をはらむと私は考えます。ですから、いまの時点からこのような「公共の福祉」論をたたいていかないといけない。また、「国民の保護」「国民の安全確保」と言われるものの実態、そのひとつの核心的部分が「公共の福祉」という名のもとに、諸々の人権を制約する、つまり一旦この法案を認めてしまったならば蟻の一穴で、行くところまで行ってしまう危険性をもっていることを、私たちは多くの市民に訴えていくことが必要だろうと思います。

「自衛隊は必要」という人に、有事法制反対の運動をどう広げていくか――前田哲男さんの主張との関係で

山内)それから、これからどういうかたちで運動をすすめていくのか、どういう視点に立って有事法制反対の議論を展開していくのかに関連する大変難しい、微妙な問題についてお話しさせていただきたいと思います。
 それは、「自衛隊の存在は認めてもいいのではないか」という方々と、どういうかたちで有事法制反対の運動をくり広げていくことができるのか、できないのかという問題です。考えてみますと、自衛隊が憲法違反だとはっきりと言っているのは国会のレベルでは共産党だけです。社民党も、村山内閣の時から自衛隊の存在そのものは認めるに至った。民主党は、自衛隊の存在を認めるだけではなく有事法制も基本的には必要だと考えている。自由党は、「集団的自衛権の行使」まで認めるべきだと考えている。今回の有事関連三法案は、共産党と社民党と民主党と自由党が反対して継続審議ないし廃案になろうとしているわけですね。そのようになったのは、多くの市民運動や労働組合の運動の力がマスコミを揺るがし、国会議員の人たちに大きな影響を与えたからだと思います。その意味において、私たちの運動の一つの成果は、十分に評価してよいと思います。
 
 ただ問題は、秋以降、民主党の人たちをも巻き込むかたちで有事法断固制定反対の姿勢を貫かせるには、いったいどういう運動なり、運動の論理なりを私たちは展開していったらいいのかを考えないわけにはいかない。そこで、一つの案として提示されているのが、岩波ブックレットの『有事法制』で前田哲男さんが書いておられることです。このブックレットの最後に、「第二戦線の構築の必要性」ということが書かれています。武力行使を含む様々な脅威から守る役割が、政府、自衛隊にあると一旦認めた上でなお有事法反対という声をだすためにはどうしたらいいかということで、五つの原則が提示されています。これを読んでみると、

原則1は「〃有事〃とは、『国土と国民にたいする直接の侵害行為』だと厳密に定義する」。
原則2は「『在日米軍の行動を円滑にする』有事法制は立法しない」。
原則3は「自治体と国民に〃非協力・非服従〃の権利が保障される」。
原則4は「そのような〃有事法案〃を国会に上程し、審議した上で、いざという時まで〃塩漬け〃=未採択状態のままにしておく」。
原則5は「国際社会に存在する不平等・不公正にたいする日本の寄与は、日本国憲法前文に掲げられた原則にもとづくこととし、そのために自衛隊とは別組織による国際協力を行う」


――このように前田哲男さんは提起しておられるわけです。これはおそらく、民主党や社民党の一部の人たちを念頭においた議論だと思います。現在の有事法案が、海外に出動する自衛隊が、対米軍事協力としてイラクなどの国々に軍事的攻撃を行うために使われる、それを否定する論理として、国土と国民にたいする直接の侵害行為にたいして有事法制を制定するというところに、その役割と限定を明確にする、そこに第二戦線をくもうというのが前田さんの提案です。私たちはこの提案にたいしてどう対応していったらいいのか、大変難しい、厳しい選択を迫られると思います。

 私自身は、憲法九条のもとでは自衛隊は憲法違反だと思いますし、最終的には『有事法制Q&A』に書かれているように、万、万、万が一、日本が外部から武力攻撃を受けた場合には、非暴力的直接抵抗をとるのが正しい選択肢だと考えます。そういう観点からのわれわれの側の平和保障の、あるいは平和実現の施策を積極的にオルタナティブとしてだしていくことが必要だろう。今朝の『朝日新聞』には、「非暴力平和隊」の人たちがパレスチナ地域に行って、憲法九条の意味や役割を検証する試みをされたという記事が載っており、憲法研究者の君島東彦さんもコメントを書いておりますが、そういう積極的提言を私たちもおこなっていく必要があると同時に、自衛隊の存在を認めている人たちについても、有事法制は断固反対という議論をどのように展開できるかを考える必要があると思います。

「軍の暴走を許さないためにも有事法制は必要」という考え方の問題性

山内)しかし私は、結論的には前田さんのような提案は、相手側の土俵にのっかってしまう危険性があるのではないかと思います。特に「原則第4」は、案としてはいささか現実性に欠けると思います。法案をいざという時まで「塩漬け」にするということは、実際問題としてできないのではないかと思います。また、「塩漬けにされ」た有事法案の中身も多分に問題があると考えます。ただ、いろいろな集会ででてくる質問の中にも「自衛隊は認めるが有事法制はどうも引っかかりがあるという時に、そこの理論的な根拠付けを一般市民の方にわかるようにどう説明したらいいか」というのがあります。私は、そのような人たちに、「有事」の場合には自衛隊は武力行使をおこなうと現行自衛隊法は定めているから(これ自体は憲法違反だけれども)、現行自衛隊法にさらにつけ加えるものが何が必要なのか、といいます。これから民主党系の人たちとそういう観点の議論をしていくべきだと思います。もちろんその場合は、自衛隊法103条の問題や適用除外規定の問題等々は、現行自衛隊法だけでは不充分だからということでだされているが、あなたはこれにどういうかたちで答えるのか? となってくるわけです。前田さんの言葉を使うならば「第二戦線」の議論としてですが、それは現行の自衛隊法で最低限の武力行使はできるようになっているのだからいいではないか、と答える(笑い)。
 
 例えば、防衛当局の「現行法では戦車も通れない」という議論にたいしては、第一次大戦後のイギリスのIndemnity Act(免責法)の例が有効だと思います。これは違法な行為を違法な行為として行わせる、後でそれが本当に国民のために誠実になされた軍事的な行動ならば、国会で免責するというのが基本的な発想です。私は、「有事に際して法律をつくらなければ軍が独走するのではないか」という議論はとるべきではない、有事のすべてについて法律がカバーすることはできないと思います。その法律をつくることによって、ますます軍の権限を拡大させる。それよりは日本国憲法のもとでは軍の行為は違法の行為だと認定させた上で、事後的にその行為がやむにやまれぬ行為ならば国会がその責任を免除することが、新たな有事法をつくるよりはるかに自衛隊の行動を法に従わせると同時に、本当の意味において有事における国民の生存や安全を確保する上でも得策だと考えます。
 
 その種の議論も、まかり間違えばミイラ取りがミイラになる、相手の土俵にのっかってしまう議論になりかねませんので、そうならないように、もう一方では、憲法の非武装平和主義にもとづく平和構想を私たちの側から積極的に提示することが必要だと思います。憲法の非武装平和主義にもとづく平和構想の積極的提示を山内)私は、ある市民グループで、九四年の北朝鮮の核開発疑惑の段階から、非核の日本と非核のアジアをつくるための「非核法」と「非核条約」の運動を展開しております。先の福田発言があったものですから、あらためて、いまこそ「非核法」制定の運動を展開していかなければならないと思います。有事法の制定以上に、平和構築のための積極的な立法的、政策的な施策を、有事法の議論に対抗するオルタナティブとしてだしていく必要があります。
 
 先ほど申し上げましたことで、「山内もとうとう転向したのか」と言われますと私の真意ではございません。ただ私たちが運動を展開していく場合に、「自衛隊の存在は認める」という人たちをも排除するのではなく、許容するような運動をしていかなければ新たな有事法制定を拒むことができないかもしれない、そういう厳しい状況にきているということを申し上げます。どうもありがとうございました。

 

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