ここに掲載する詩は、作者のご厚意で掲載させていただくことになりました。
     今後も定期的に掲載する予定です。
「若者の戒名」 
         三井 庄二さん

葉鶏頭の紅 鮮やかに

農業協同館と共同墓地

石碑と墓石が立ち並び

江戸時代から現代まで

十九夜 二十三夜塔

二十六夜 三十三夜塔

成田山新榮講行者

獻納軍馬壱頭とあって

特に目立つ「火靈の碑」

祖先の墓を守るように

――「大東亞戰々歿者」

靖安院忠覺正道居士
   ……戰死行年二十六才

海解院忠誠日俊居士
   ……戰死行季二十三才

 

大滄院勇進日夏居士
   ……病歿行季二十二才

觀海院功烈直道居士
   ……戰死行年二十四才

松善院法與護国居士
   ……於テ歿ス二十七才

「昭和廿七年一月建之」

息子への親の思いが

伝わって 戦中の青春

――されど

 

これが若者の 君たちの

願いだったのか

国に奪われた若い生命に

換えられた戒名の苛烈さ

君たちは この名誉に

あの世で満足しているか

子の死を望む親はない

遺族年金も何になろうか

嘆きの刻印ではないのか

君たちよ 靖国の杜から

出てこないか

天皇や軍国の呪縛から

戦場と死の行進とから

辛くも逃れて 生き延び

等身大の人間に戻った

横井庄一 小野田寛郎

それが君たちの また

親の願いではなかったか

――なのに

 

 

日本有事の専守防衛から

シーレーンや周辺有事へ

防衛費GNP比一%枠外し

広大なアメリカ軍の基地

在日米軍へ思いやり予算

――そして今

アジアや太平洋の危機が

日本のそれへ変えられて

日米防衛指針の成立

ガイドラインに隠されて

戦争と侵略の歴史も

靖国社に讃え崇められて

予感――またも

過酷な青春が強要されて

 

木々の葉が色づく墓地

銀杏の実の香が満ちて

見上げた晩秋の空に

腹の膨れた軍用輸送機

習志野駐屯地に向けて

落下傘部隊の演習

断続的な機体の飛行

C―1やC―130が

滑って行く 緩やかに

若者の戒名を 満載して

滑って行く


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