ここに掲載する詩は、反改憲ネット21主催「連続講座−憲法Q&A」にご参加いただいた安達さん、安達さんのお知り合いの「戦争に反対する詩人の会」甲田さんがお書きになったものです。ご厚意で掲載させていただくことになりました。
 詩集より
 ・「進軍ラッパは」  安達 双葉さん
 ・「真夏のユリ」 甲田  四郎さん

「進軍ラッパは」 
     安達 双葉さん

新しい世紀になっても
暮らしに変わりなく
世間の風評では 今の老人は
金持ちだそうだ。
人並みに私も老人になり知った事は
どうも
例から外れたらしい。

−− 前世紀は戦争の世紀だった
   新しい世紀は平和な世紀に −−

この言葉に望みをかけ
外れていても まあいいかと
開き直っていたのに
 これは 新しい戦争だ
 民主主義を守る 正義の戦いだ
 善と悪の戦いだ
 さあ さあ どちらに付くのか
この海の向こうの国の代表の言葉に
私の国の代表は 何時のまにか
軍隊になった自衛隊に
国の掟も蹴飛ばして
日の丸を持たせ進軍ラッパ
アラーの神に祈りを捧げる人々は
ジハード ジハード と謳う。

その昔 この国では
神の国を守る
正義の戦いだ 聖戦だ
世界で一番強い軍隊だ と
進軍ラッパが響き渡り
乙女は 鉢巻きしめて工場に
若者は 片道だけの飛行燃料で
旅だって行きました。
 だが
神風が吹き勝利するはずの国は
戦に敗け
他国で
略奪 強姦 殺戮を繰り返し
世界で唯一つ 行く先々に
付属の 性軍隊慰安所を
設置する軍隊でした。
進軍ラッパは
何時だって
どこでも
人々を狂わせ
人である事を許さない。

「真夏のユリ」 
     甲田 四郎さん

山の麓でバスを降りて
「おうちへ」
大きな帽子をかぶったユリがトコトコ歩けば
陽が背中にジリジリついてくる
コンクリと顔に照り返す
抱っこするかと聞けば首を振って、
自動販売機を指してジュースと言う
ゴロンと転がり出た缶ジュース、
持たせればしっかと握って仰向いて口をつけて
帽子の下でハアと息をついて、
「おうちへ」トコトコ、トコトコ歩きだす

また止まって缶に口つけて、ハアと息して、
歩き出したと思えば止まって、仰向いて口つけて動かない
缶を取り上げてみれば空っぽだ
金具をすっていた、
抱き上げれば幼い体が汗ばみ火照って
ぐったりとしてせわしい呼吸をしている、
眉を上げて少し開いた口で
私は立ち止まる、それから急ぎ足になる、
「おうちへ、おうちへ」
しっかり抱いたこの子の口は
五十年より前の私の弟の口にそっくりだ
母親が泣いて伸ばしていた両手の先で、
おしめの下の肉のない尻の皮が垂れていた弟
この子焼夷弾に焼かれた子の口にそっくりだ、
うつ伏せに倒れて炭化した母親の両手の先で
両手両足を上げて炭化した子の
この子そっくりだ、親たちの伸ばした手の先で
埋められていった子たちの口に
1945年「満州」のおびただしい数の<土盛りの墓の雪原※

山本周五郎の小説では
五十年後、五十年前、と薄幸の女が呟く
わたしは生きていない、わたしは生まれていない
いまだってわたしが会っている辛い目は誰も知らないし、
五十年後、五十年前、跡かたもないんだわと
想う男に会ってかの女は幸せになった、だが
私の弟や炭化した子や「満州」の子たちは
五十年より前生まれてじきに跡かたもなくなったままだ
この子私の弟の代わりのようだ、
炭化した子の、「満州」の子たちの代わりのようだ
「おうちへ、おうちへ」
眠る子をしっかり抱いて歩いていけば
陽はジリジリといつまでもついてくる
コンクリが眩しく揺れる
この子昨日傾いた陽を背に受けて手を振った、
長い影に並んだ短い影が手を振って、
私を振り仰いで笑った
それで影が二つとも手足を振った、
そのゆりかごの時間遠く山波は動かず
陽だけするする落ちていった
今日はなぜ陽が落ちない?

※岩渕欽哉詩集『サバイバル・ゲーム』(86年)から

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