いま各地で有事法制反対の声が上がっています。
8月5日にお話しを伺った大野和興さん(農業ジャーナリスト)から「戦争に食料と土地・水は渡さない百姓宣言」の全文を送っていただきましたので紹介します。

 農業に携わっている人たちも有事法制反対の声!
     「戦争に食料と土地・水は渡さない百姓宣言」

戦争に食料と土地・水は渡さない百姓宣言 武力攻撃事態法案など有事法制三法案が国会に出されました。「まさかのときの備え」と政府は説明していますが、条文をよく読むと、戦争を遂行するための法律であることがわかります。この法律が成立すると、「武力攻撃が予測される事態」というあいまいな状況のもとで、自衛隊が迎撃体制に入り、必要な土地や家屋の接収といった財産権の制限や必要物資、運輸、通信などの提供を市民や民間企業に義務付け、強制することができるようになります。また、自治体は自衛隊出動に関しあらゆる面で協力義務を負うことになります。それは、戦前、国家が総力をあげて戦争体制を構築するために制定した国家総動員法の現代版であるといえます。
 しかも、武力攻撃事態の中にはいわゆる「周辺事態」がふくまれます。1999年に制定された周辺事態法は、日本の周辺で戦争が起こるかもしれないという想定のもとに、自衛隊の米軍後方支援を定めた法律です。「周辺事態」での主役は米軍です。したがって「有事」かどうかを判断するのも米軍であり、そのもとで日本は米軍の行動を国を挙げて協力することになります。

 では、こうした有事法制が成立したら、百姓にとって何が起こるのか。

 第一に、「有事」出動した米軍や自衛隊が陣地や塹壕を作ったり、作戦展開をする際に必要となる土地や立木、家屋を提供しなければなりません。その場合は、土地収用法や森林法、土地区画整理法などは停止され、法律より米軍や自衛隊の必要が優先します。ここが敵を迎え撃つ戦略拠点として最適と判断されたら、収穫を目前に控えた果樹園も野菜畑も水田も、容赦なく接収され掘り返されることになるのです。

 第二に、米軍や自衛隊は必要な物資の使用あるいは収容を自由にできることになります。食料は真っ先に必要となる物資です。コメ、野菜、食肉など重要食料は移動禁止となって勝手に売買できなくなり、安い統制価格で政府に供出しなければならなくなるでしょう。朝鮮戦争が勃発した1950年(昭和25年)、麦の供出割当が集落に下りてきて、それを拒否した神奈川県中津村に米兵が警官や県職員とともに現れ、カービン銃を突きつけて供出を迫ったという歴史があります。決して戦前の話ではないのです。

 第三点は農業生産そのものへの統制です。国家総動員法のもとで当時の百姓は主要作物への作付け強制と「不要不急」作物の作付け制限を経験しました。1943年(昭和18年)、青森県ではリンゴ園1000町歩の伐採が勧奨され、水田の草取り前にリンゴの袋かけをした同県船沢村の農民約30人が検挙されるという事件がありました。桑園の桑も抜かれ、花農家は非国民と呼ばれました。いま日本の食料自給率はカロリー換算で40%、穀物自給率は28%です。
もし「有事」となれば、すべてをイモ畑にして、家畜は殺せ、という「協力」要請が百姓に下りてくることは十分想定できます。

 かつて多くの百姓が兵士として戦場に狩り出されました。たくさんの死者を出し、アジアの人々に計り知れない惨禍を強いました。銃後農村では百姓としての作る自由、売る自由を奪われ、農の荒廃が広がりました。こうした歴史を持つ私たちは、有事法制という名の戦争法を見逃すことはできません。また、自然の営みに沿って生命を育む農業は、本当の意味で平和のなりわいです。戦争は自然を、生命を、種を破壊します。生命の尊厳への挑戦なのです。こうした思いを込めて、私たちは同法制の制定に反対し、百姓として戦争のために食料を、土地を、水を提供しないことを宣言します。

 2002年5月
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