『有事法制Q&A 何が問題か?』
   私が薦める緊急必読書
     石上 正夫さん(ジャーナリスト・反改憲ネット21世話人)

 小泉内閣は「戦争をしない国」を「有事法制」の閣議決定によって、日本を「戦争をする国」に変えようとしている。
小泉純一郎と田中真紀子が、二人三脚で絶叫型パフォーマンスで、構造改革の花火をうち上げて、80パーセントを超える支持率を獲得した。「何かやってくれるかも知れない」という幻想に幻惑された高支持率であった。
小泉内閣ができて一年、小泉首相が絶叫した構造改革とは、「アメリカと共に毅然と戦う」、場当たり対米公約で「テロ特別措置法」を成立させ、「有事法制」という「戦争遂行法」を閣議決定することであった。
国民はそう簡単には騙されない。支持率は36パーセントに下落、まだまだ下がる。
 
 しかし、組閣当初の高支持率の雪崩現象のなかをかいくぐって、「有事関連三法案」を継続審議に持ち込んでも成立させようとしている。
若し「有事法制」を成立させるようなことになれば、首相の強権発動を許し、国民を根こそぎ動員する悪法ができ上がるのである。
戦争をしないと誓った憲法第九条を無視して、戦争をする国に構造改革することを容認すれば、私たちは戦争遂行の命令に従う義務を背負うことになるのである。
火の粉をかぶってから反対しても最早手遅れである。 
『有事法制Q&A 何が問題か?』は、国民根こそぎ動員の悪法を阻止する必読書である。本書は、1部から4部構成になっている。
 
「第1部 有事法って何? それをつくことの意味」
 小泉首相は「憲法の枠内」「有事になったら国と国民を守るための法制化」と言うが、家屋・土地の強制収容と根こそぎの動員の二つをとっても、憲法第二十二条「居住・移転・職業選択・営業の自由」の違反であることは明白である。
こうしたごまかしを正面から、わかりやすく正確に書いているのがこの本の特徴である。

「有事法制は『いかに戦争をやるか』ということを詳細に定める法整備です」と、論破して判断の要点を明記している。
何しろ法律は、一旦成立すれば、一人歩きをする。「国家総動員法」は、林銑十郎内閣でつくられ、近衛内閣でより強化され、東条内閣で国民をしめ上げる極限の悪法の正体を現し、日本を敗戦のどん底に追い落とした。
有事法制も小泉内閣の「ほかの政治家がやらないことをやる」とした思い込みで、場当たり的につくられて、死に体の小泉内閣が消え去っても、法律は一人歩きすることを、国家総動員法の前例を教訓にすべきである。
 
「第2部 有事法制Q&A」
 「備えあれば憂いなし」小泉首相が国民になるほどそうかと、使い古した諺で国民を籠絡しようとする隠された意図の真意が、第2部を読むとなるほどとわかる。
「これまでなかったこと自体がおかしい?」小泉流虚言とその同調者を、一刀両断にしているところが読むものを納得させる。
戦争はしない国是を無視する発想の方が、極めておかしいと思うのが普通の人の考えである。「悪の枢軸」を名指しで戦争拡大を叫ぶブッシュ大統領に、戦争を拒否する国民を売り渡してはならないのである。
 
「第3部 どうなる?私たちの生活」
 「有事法制」が成立すれば、まず兵員・兵器・戦闘用物資輸送のために、鉄道・航空・船舶・トラックの企業および従業員が、根こそぎ動員され、首相・防衛庁長官の命令に従う懲役六ヶ月または30万円の罰金である。
「こんな法律を成立させますか?」この本は一人ひとりが自分の考えで答えを出すための道標になるいい資料だといえる。
無条件で戦争に賛成する者などいない。権力機関が戦争をしようとする時は、言論統制・思想統制、戦う青少年育成の教育改革を行う。「有事法制」でどんな手をうってくるか、第3部はこの疑問を解きあかしてくれる。
 
「第4部 有事法制ではなく、憲法の実行を」
 私たちは世界に誇る「平和憲法」をもっている。
戦争をしない国日本、憲法九条の理念をアジア諸国へ、そして世界の国々へ積極的に発信するのが、日本政府の急務である。九条の理念が普及すれば、日本を攻撃することのない世界情勢は整っているのである。
 
 憲法九条の理念は、日本人の願いであると同時に、世界の人びとの願いでもある。
350万人の同胞の命を失い、アジア諸国民族2000万人の命を奪った戦争の惨禍の反省の上につくられたのが憲法九条である。
奇人・変人を自称する首相の思いこみ、場当たり対米公約によって平和憲法を否定することはできない。
私たちのためだけではない。子や孫や日本の将来に責任をもつ者は、「有事法制」を廃案に追い込む責任がある。

私たちが今やるべきことを、『有事法制Q&A 何が問題か?』は、さまざまな角度から検証し、考える材料を提供している。
 
『Q&A日本国憲法のよみ方』(弓削達監修/反改憲ネット21編・明石書店・1000円)もあわせておすすめしたい。
 2002年6月26日