Q10.「有事法案」が制定されたらどうなるの?

A.例外なくすべての国民が戦争協力を強制される

1.私達の生活は? 

有事法が制定されれば、例外なくすべての国民が戦争協力を強制される事になります。(武力攻撃事態法案第八条)。私たちの生活は例えば次のようになると考えられます。

 「首相が記者会見で、『インド洋の自衛隊艦船にむけてイラクがミサイルを発射したことが米軍より通知されました。日本政府は武力攻撃事態が発生したと判断し、自衛隊に出撃を命じた』と発表し、自衛隊が米軍とともにイラクに武力行使を開始しました」
テレビのニュース番組を見ていた大学生のA君はビックリします。
ニュースでは自衛隊艦船が本当に攻撃されたのかどうかもよく分かりません。
しかし事態はどんどん進んでいきます。ニュースでは「横須賀から自衛隊艦船が出港した」「米軍と自衛隊が○○を攻撃」と報道されるだけ。
「指定公共機関」であるNHK(日本放送協会)は政府の報道管制に協力して(武力攻撃事態法案第2条第5号)、米軍と自衛隊が爆弾を投下している下で何が起きているのか全く報道しなくなった。
聞こえてくるのは「敵からのテロ攻撃に備えろ」「不審者に気をつけろ」という「警報」ばかり。

 A君のまわりはピリピリした空気に。中東からきている留学生のB君は「何か不穏な行動をするのじゃないか」と常に警察に監視されています。B君のクラスメートや近所の人たちも「彼はテロリストではないか」と疑いの目を向け始めます。その疑いの目は留学生や在日外国人の人たちだけに向けられるのではありません。
「有事関連三法案」に反対してきた市民や労働組合の組合員はすでに警察の監視下におかれ、「過激派」とレッテル貼りされて排斥されようとしています。

 また、「この戦争は正義の戦争」であり、これに協力しないのは「非国民」という雰囲気がつくられ、まわりに戦争協力しない者はいないかなど、住民同士で相互に監視しあうようになるのです。
まさに太平洋戦争の時の「隣組」のようなものの復活です。

 年金生活者Cさんの家の近くには米軍基地があり、戦争が始まって以来、武装した自衛隊が基地を警備している(自衛隊法第81条の2)。米軍の戦闘機が夜中にも轟音をたてながら出撃していきますが、Cさんたちは戦時だからということで我慢を強いられます。住民たちは、すでにつくられた「民間防衛組織」に組織されており、いざとなったら自衛隊や警察と連携しながら避難し、負傷者の救援や搬送、消防をしろと命じられます。
また民間の空港や港を急きょ使用することになった自衛隊や米軍が、武器・弾薬置き場を確保するために、近辺の家を収用しました(自衛隊法改定案103条第3項)。
 
 こうして、あらゆるものが軍隊優先となり、戦争協力を拒否する者には銃を向ける自衛隊に監視されながら、私たちは戦争に協力させられるのです。

2.統制される通信・放送

 通信・放送事業者は、今回の「武力攻撃事態法案」において戦争に協力する「責務」を負う「指定公共機関」と定められています(第二条第五号)。具体的には、「日本放送協会」(NHK)が明記されており、他にも民放や新聞社も含まれると考えられます。
これら通信・放送事業者は「警報等の緊急情報の伝達」にあたると言われています。つまり、日本の首相が「武力攻撃事態」と宣言すれば、国民にテレビ・ラジオ・インターネットなどを通じて「武力攻撃事態」が発生したこと、そしてすべての国民に「武力攻撃事態」への「対処」に「協力」するよう呼びかけなければなりません。
 
 政府や自衛隊は報道管制を敷くことから、報道諸機関・ジャーナリストは自由に報道することはできません。それは、「対テロ特措法」にもとづいてインド洋に派遣された自衛隊艦船が何をしているのかを国民に全く知らせていないのを見れば明らかなように、たとえマスコミに取材させても自衛隊がお膳立てして都合の良いような取材と報道しかさせないでしょう。とくに自衛隊の作戦については「防衛秘密」となります。
自衛隊や米軍がいつ、どこから出撃するか、どういう攻撃をしているのかは報道できません。もし報道したら「防衛秘密」を漏洩したとして罰せられます。
 
 様々な政府の「警報」を発する役割を義務づけられている通信・放送事業者で働く労働者は、これを拒否すれば会社にクビにされかねません。このような状況のもとで、報道諸機関は、みずから、日本のおこなう戦争がいかに正しいのかを「解説」し、国民の戦争協力が必要だとキャンペーンしたり、”敵が攻撃をしかけるかもしれないから備えろ”と煽る報道をすることも考えられます。
 
 政府は「言論の自由」を制限することはないと言っています。しかし、アメリカの報復戦争をマスコミがいかに報道したのかを想起する必要があると思います。ラムズフェルド米国防長官は記者を集め”Watch what you say! ”(ロに気をつけろよ!)と一喝したといいます。
日本のマスコミも「報復」や「戦争」という言葉を使いませんでした。
そしてハイジャック磯が世界貿易センタービルにつっこみ、ビルが崩れ落ちる映像を何度もながす一方で、「犯人」とされるアルカーイダはこんなに危険なテロリストなのだと、おどろおどろしく煽って、アメリカのアフガニスタン空爆、そして日本の参戦も当然だという世論をつくるのに一役かいました。
アフガニスタンの民間人が死んでも、わずかに「誤爆」と報道されるだけ。
「アルカーイダ掃討」「ビンラディン捕獲」など、太平洋戦争中とみまごうような文字が連日おどったのでした。

 このことを見ても、マスコミ自身がすでに政府の政策を支えるために”自主規制”したり、世論をあおったりしているのです。いくらジャーナリスト個人が戦争の実態を報道したいと思っても、もはや「言論の自由」はありません。「大本営発表」のような報道を行う「自由」しかないのです。

3.あらゆる業種が動員される

●運輸労働の現場では?
民間空港や民間港は、米軍や自衛隊の出撃基地と同時に兵站基地と化します。
国が管理する第一種空港(羽田、伊丹など)は真っ先に軍事利用されます。航空会社が所有する格納庫や貨物施設は自衛隊が収用して武器・弾薬庫に(自衛隊法第77条の2)。
戦時なので24時間、米軍や自衛隊の戦闘機が離発着。港湾も米軍や自衛隊に収用され、民間船舶の使用が規制されます。港湾の管理者は自治体であり、自治体の長が反対すれば港湾の軍事利用はできませんでした。たとえば、神戸市は75年以来、寄港する外国艦船に核を搭載していない証明書を求める「非核神戸方式」をとってきて
おり、米艦艇は一度も寄港していません。

 しかし、首相が「武力攻撃事態」と宣言すれば、「地方公共団体」は「必要な措置を実施する責務を有する」(武力攻撃事態法第5条)だけでなく、たとえ自治体長が港湾の軍事利用に反対しても首相が代執行することによって、港湾が軍事利用されることになるのです(武力攻撃事態法案第15条)。
港湾会社が輸出するために一時所有していた食料品や生活物資も、自衛隊が「物資保管命令」を出して収用(自衛隊法第103条第一項)。「指定公共機関」と定められている運輸業者(武力攻撃事態法案第2条第5号)で働く労働者には、「業務従事命令」(自衛隊法第103条第2項)が出されます。
 
 港湾会社で働くAさんは、突然会社から呼び出され、出撃する米軍や自衛隊の艦船への武器・弾薬の積み込みを命じられます。昼夜を分かたずAさんは同僚と一緒に、戦地に向かう艦船に軍需物資や生活物資の積み込みをさせられます。
 船員Bさんは、戦争中でも中東から石油を輸送するように会社から指示されます。
Bさんは、イラン・イラク戦争に巻き込まれた先輩の話を思い出して、命の危険を感じて不安になります。

 航空会社の整備士Cさんは、故障した戦闘機の修理をするように会社から命令された。
自衛隊機でイラク周辺国から避難する在留邦人を日本に輸送していましたが、自衛隊機だけでは間に合わなくなつたために、パイロットのDさんは在留邦人の輸送を命じられます。またパイロットのEさんは、沖縄の米軍基地まで米兵を輸送しろと命じられました。しかも武器・弾薬も一緒に。「自分の飛行機が敵国から狙われるのではない
か」と彼らは不安でたまりません。
 陸上では、トラックや鉄道などを使っての武器・弾薬や燃料などの大量輸送が行われます。

このように陸・海・空の運輸労働者や港湾労働者たちは、兵站活動に動員されると考えられます。

●医療現場では?
 医師Aさんと看護師Bさんは米軍や自衛隊と戦地へ行き、野戦病院で傷病兵を治療するよう「業務従事命令」を出されました(自衛隊法第103条第2項)。Aさんは、アメリカがアフガニスタンの病院や赤十字倉庫も爆撃したことを思い出し、「私たちの命もどうなるか分からない」と不安になりながら現地に行くことになりました。
 
 日本国内では、日赤病院や国立・自治体病院でも負傷兵の治療ができるように準備をするように指示されました。もし負傷兵が送られてきたら、治療は軍隊優先。入院していた民間人は別の病院に移されます。
Cさんの病院では負傷兵が送られてくる前から、転院・退院させる患者のリストをつくれと命令されました。
 
医師が負傷兵にたいして麻薬を使う際には、厳重に管理するための手続きも省略できます(自衛隊法改正案116条第二項)。さらに患者の重傷度によって治療する順位が決められます(「トリアージ」)。つまり、大量に傷病兵が運びこまれた場合、治る見込みがあって再び戦場に送り込める患者から治療し、治る見込みのないものは放っておくのです。
 第二次世界大戦中、日赤病院の看護師だけでも約5800人もの死傷者を出しました。朝鮮戦争中も千人以上の看護師が米軍博多キャンプの野戦病院へ動員されました。先輩から話を開いて「再び白衣を戦場の血で汚したくない」と思ってきた看護師Dさんは、否応なくこのような戦争協力に動員されるのです。

●自治体職員は?
 有事になれば、自治体職員は、自衛隊の軍事作戦に国民を協力させてゆく役割を負わされます。
今回の自衛隊法「改正」案では、第103条で「自衛隊が出動を命ぜられた場合における施設の管理、土地等の使用、物資の保管命令、物資の収用又は業務従事命令」を行う場合、「公用令書」を交付することを定めています。この「公用令書」を実際に伝えるのは政府や自治体の職員です。そして、自治体職員は、住民から土地・家屋・物資を接収する無慈悲な強制執行の前面にたたされるのです。
 
 これまで、憲法では、公務員は「全体の奉仕者であって、一部の奉仕者ではない」(第十五条)とされてきました。しかし、軍事関連行政にたずさわるならば、公務員は、その性格を変えてしまいます。
 自治体職員の場合、これまでは住民に奉仕する公務員でした。しかし、戦時体制を支える自治体職員に求められるのは、国家に奉仕し、国家の命令に忠実に従い、他方、住民・国民には、奉仕ではなく、命令し従わせることなのです。そして、このような戦時体制を支える自治体職員づくりはすでに始まっています。

 たとえば、東京都では、数年前から都庁や市・区・町村の職場に警察官が派遣されました。それは、当局が「警察官の役割を肌身で感じ、その知識と経験を学べ」などと言っているように職員の再教育のためでもあるのです。さらには、都の防災訓練「ビッグ・レスキユー」では、都の職員は自衛隊の指令下で働かされているのです。

●政府の思惑ひとつですべての業種の企業・機関が戦争協力
 今回の有事関連三法案にもとづいて戦争に協力させられる業種は、これまで述べてきたものだけに限りません。あらゆる業種が協力させられることになります。
 武力攻撃事態法案の「武力攻撃事態への対処」に「必要な措置を実施する責務を有する」とされている「指定公共機関」の定義には、日本銀行、日本赤十字社、NHK等が上げられています。しかし、それだけにとどまりません。政府が「政令」で「公益的事業」と定めさえすれば、食糧、衣料、土木建設等、あらゆる業種の民間企業、機関が「責務を有する」(責任と義務を負う)ことになります。これは、政府の思惑ひとつで、すべての業種の企業、機関を戦争に協力させることができるのです。

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