Q4.「武力攻撃事態」とは?

A.「戦争ができる国家」の宣言

政府は、次のような事例を「武力攻撃事態」とみなすことを明らかにしています。

1.公海上の艦船や飛行機が攻撃された場合、「組織的・計画的攻撃だと認定」できれば「武力攻撃事態」に当たる。周辺事態法にもとづいて公海上でアメリカ軍の「後方支援」をしている自衛艦に攻撃が加えられた場合、「組織的計画的な攻撃が発生する場合においては自衛権の発動になる」

2.PKO協力法や対テロ特措法にもとづいて他国領域で活動する自衛隊部隊が攻撃されたら、「武力攻撃」に当たる。在外公館への攻撃も「諸般の状況」によっては「武力攻撃に該当する」

3.「ミサイルが着弾したのちではなく、武力攻撃の着手があった時」に、自衛隊は武力行使できる

4.「武力攻撃のおそれのある場合」とは「防衛出動を下令し得る事態」であり、具体的には「ある国が我が国に対して武力攻撃を行うとの意図を明示し、攻撃のための多数の艦船あるいは航空機を集結させている」場合などである。

5.「武力攻撃が予測されるに至った事態」とは「防衛出動待機命令等を下令し得る事態」であり、具体的には「ある国が我が国への攻撃のため、部隊の充足を高めるべく予備役の招集や軍の要員の禁足、非常呼集を行っているとみられる」「我が国を攻撃するためとみられる軍事施設の新たな構築を行っている」場合などである。

6.「『武力攻撃が予測されるに至った事態』及び『武力攻撃のおそれのある場合』を含めて武力攻撃事態としているのは、・・・武力攻撃に対して時期を失することなく効果的に対処し得るようにするとの考え方に基づくものである。」

政府のこのような見解から「武力攻撃事態法案」のとんでもない性格があらためて浮き彫りになっています。
 
 第1に、自衛隊の「武力の行使」を明言したことです。
政府は、「武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」という憲法第九条を明確に否定したのです。
 周辺事態法でも対テロ特措法でも、政府は、アメリカなどへの自衛隊の「後方支援」は「武力による威嚇又は武力の行使に当たるものであってはならない」と規定せざるをえませんでした。それは、「武力の行使」を永久に「放棄」するという憲法上の制約を建前としては「遵守」するとしてきたからです。
 ところが、「武力攻撃事態法案」では、前に述べたように、首相が、ある事態を「武力攻撃事態」と認定すれば自衛隊が「武力の行使」を実施できる、と規定されているのです。しかも、「武力攻撃に対して時機を失することなく効果的に対処し得るようにする」というのですから、先制攻撃も可能となるのです。このように小泉政権は、憲法第九条を、その条文をかえることなく、否定したのです。
 
第2に、「日本有事」の地理的限定をとりはらったことです。
 「我が国」といえば、普通、日本の領土・領空・領海とそこで成立している政治・経済のシステムや市民社会を指すと思うはずです。
 ところが、「武力攻撃事態法案」では、「日本国の施政の下にある領域」という限定も付いていません。
つまり「我が国に対する外部からの武力攻撃」(第二条一号)の「我が国」は、海外で活動する自衛隊部隊、在外公館さらには在留邦人や在外企業をも指しているにちがいありません。まさに、政府がいう「武力攻撃事態法案」の「我が国」には、「日本国家の権益」も含まれているのです。
 
第3に、「外部からの武力攻撃」とされている「外部」=攻撃の主体が、「国」だけを指しているわけではないことです。「武力攻撃」が「組織的計画的」であれば「武力攻撃事態」と認定できるというのですから、例えば、在外公館が何者かによって攻撃された時、政府が「テロリストグループによる組織的計画的攻撃」と判断すれば、首相は「武力行使」を自衛隊に命令できるのです。
 
第4に、″海外では自衛隊はアメリカ軍の武力行使と一体となる活動はできない″という政府見解の「規制」を取り払ったことです。
 いまや、周辺事態法にもとづいてアメリカ軍を後方支援している自衛艦が武力攻撃を受けた場合(「おそれのある場合」や「予測されるに至った事態」も当然にも含まれます)、これを「武力攻撃事態」と認定して、「自衛権」を発動して武力行使できる、というのです。
 政府は、世界中で発生する事態を「武力攻撃事態」と認定すれば、「日本有事が発生した」として、日米安保条約第五条(日本有事における日米共同作戦の規定)を適用して、アメリカ軍との共同作戦のために自衛隊を世界中に派遣できるようにしたのです。これは、日米安保同盟の強化そのものです。

第五に、「武力攻撃事態」であると認定し「対処基本方針」を決定し実施するのがすべて首相である、ということです。ある事態を「武力攻撃のおそれがある場合」や「武力攻撃が予測されるに至った事態」と認定する客観的基準があるように見えますが、そうではありません。「政府の主観(に頼る部分)の方が大きいかもしれない」(久間衆院有事法制特別委員会与党筆頭理事)というのですから、首相の主観で、ある事態を「武力攻撃事態」と認定すれば、海外で自衛隊が武力行使できるわけです。

 「自衛」の名において戦争を遂行し、「国防」の名のもとに国民を戦争に動員した歴史の経験を踏まえて、日本の国民は、日本国家に、「国権の発動」たる戦争を禁止し、戦力の不保持・武力不行使のしばりをかけました。それが現在の憲法です。小泉首相は「平和国家」を理想とする憲法を破壊し「戦争ができる国家」をつくる決意をかためたのです。「武力攻撃事態法案」をはじめとした有事3法案に、小泉政権のそのような決意を強く感じさせられます。

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