Q6.「不審船やテロに備えるために必要」?

A.「不審船」や「テロ」に対する不安で政府の主張を鵜呑みにするのは危険

「テロや不審船に備えて有事法制が必要だ」と言われると、「そうだな」と納得してしまうかも知れません。
それは、きっと、9・11事件や「不審船」事件に直面して、自分たちの命や生活が突然奪われるかもしれないという恐怖と不安を多くの人が抱いたからだと思います。しかし、そのような政府の主張を鵜呑みにするのは、とても危険なことです。

1.タイミングよすぎる「不審船」事件

 2001年12月奄美諸島沖合で、海上保安庁の巡視船が「不審船」にたいして武力を行使して撃沈し、少なくとも15名の乗組員を死亡させました。第二次大戦後、日本国家による初めての武力行使でした。
「不審船」事件は、小泉政権が「対テロ特措法」を成立させ、ブッシュ政権によるアフガニスタン侵略戦争に日本が戦後初めて参戦した直後に、有事法を審議する今通常国会開会の直前におきました。そして小泉首相は、事件直後から「有事には戦争だけでなく、テロも不審船もある。備えのために有事法制が必要だ」と発言し、年明けの通常国会に有事三法案を提出しました。「不審船」事件が起きたタイミングがあまりにもよすぎはしないでしょうか。
 日本近海では、国籍不明の「不審船」が一年中何隻も航行しています。今回だけ、たまたま「発見」されたというのはおかしな話です。事件後、「今回の『不審船』と同型の船舶が、北朝鮮の港を出港し、中国に寄港していた」という米軍事衛星の情報が報道されました。アメリカが軍事衛星をつかって、北朝鮮の港を出入港する船舶をすべて掌握しているのは公然の秘密です。
 軍事衛星で「不審船」の動向をつかんでいたアメリカが日本へ情報を提供し、自衛隊機が「不審船」を監視し、巡視船が「不審船」を武力攻撃した。ならば、日米両政府が、この時期を意識的に選んで、「不審船」を追尾し撃沈する軍事作戦を予定計画的に行なつたのではないかと推測できます。

2.「テロ対策」の名による戦争と治安弾圧の恐怖

「今回の有事三法案には、テロ・不審船対策が盛り込まれなかった欠陥がある」と新聞などで言われています。しかし、このような主張を鵜呑みにして、いいのでしょうか。

 第一に、「テロ対策」と称して、もっぱらテロヘの軍事的対処の必要性ばかりが強調されていることに疑問を感じます。なぜなら、テロをなくすことこそが重要であり、そのためにはテロが引き起こされる根拠である問題を解決すべきだからです。例えば、パレスチナのイスラム原理主義組織(ハマスなど)は、パレスチナを軍事支配し民衆を虐殺しつづけているイスラエルとこれを支えているアメリカにたいするインティファーダ(抵抗運動)として「殉教攻撃」(いわゆる自爆テロ)を行っているのであり、そのようなものとしてアラブ民衆から支持されています。テロの背景・根拠であるアメリカ(およびそれに支えられたイスラエルなど)による世界中での軍事侵略や経済支配(市場経済システムのおしつけ)とそれへの日本の協力・加担について省みることなく、これを不問に付して、テロヘの軍事的対処を理由に海外派兵を強行したり治安対策を強化することは、本末転倒ではないでしょうか。
 
 第二に、小泉政権は「武力攻撃事態法案」に「テロ・不審船」対策という言葉を明記しませんでしたが、法案に盛り込まれた第24条「その他の緊急事態対処のための措置」は、「テロ・不審船」対策であり、さらに治安対策にほかなりません。小泉首相自身、「緊急事態には戦争だけでなく、テロも不審船もある」と明言しています。「一番シビアな事態で整備すれば、レベルの低い事態は、準用、修正すれば適用できる」と考えているのです。
 政府は、「テロ(リスト)」とみなしたものに協力する者もテロリストと同罪だという「ブッシュ・ドクトリン」と同様の発想で、政府の戦争政策に反対する組織や個人を「テロリストやテロリストを支援する組織・個人」だと決めつけて取り締まろうとしているのです。
 アメリカでは2001年の10月に「反テロ愛国法」が成立しました。「反テロ愛国法」によって、政府は特定の容疑なしに外国人を拘束したり、盗聴を裁判所の許可なしにできる権限を手にし、容疑もはっきりしないイスラム系の人々を次々に逮捕しています。小泉首相が第24条にもとづいておこなおうとしている「テロ対策」も、同じようなものになるにちがいありません。すでに盗聴法や組織犯罪対策法を成立させてきたのが政府なのですから。
 
第三に、小泉政権は、「武力攻撃事態法案」において、9・11事件のような「大規模テロ」については「武力攻撃事態」と認定し、「テロリスト」やこれを支援しているとみなした国にたいして先制攻撃することを可能にしています。政府は、「我が国」に対して「武力攻撃」をおこなう「外部」に、国家だけでなく、「組織的・計画的」に武力攻撃する組織、すなわちいわゆる「テロリスト組織」も含めているのです。だがそれは、ブッシュ政権と一緒になって、全世界に戦禍をむしろ拡大することでしかありません。これほど危険な「テロ・不審船」対策があるでしょうか。 

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