Q9.いまなぜ有事法制か?

A.侵略戦争をもできる「普通の国」への脱皮するため

1.アメリカのイラク攻撃に向け積極的に協力

 まず、なによりも、すでにいま日本は戦争に参加しており、そこでの万全の「備え」を必要としているからではないでしょうか。
昨2001年秋に小泉政権は、アメリカのアフガニスタン戦争に協力するために「テロ対策特別措置法」を制定し、これにもとづいて自衛隊艦船五隻をインド洋に派遣しました。これによって日本は、戦後初めて参戦を果たしたのです。このインド洋に派遣された自衛隊艦船は、アフガニスタンにたいして無差別攻撃を行っている米英軍の艦船にたいする補給などの「後方支援」をいまなお行っています。

このような状況のなかでアメリカのブッシュ大統領は、イラク、イラン、北朝鮮の三国を名指しにして「悪の枢軸」と烙印し、ことあるごとにイラクのフセイン政権を転覆させるために武力攻撃する意思を公言しています。早ければ来春(2003年春)にも攻撃を開始するといわれています。
このイラク攻撃をブッシュ大統領は、
″イラクが大量破壊兵器を開発しており、これをアルカーイダなどに横流ししてアメリカにたいする攻撃に使われる可能性があるから、イラクに武力攻撃を加えてフセイン政権を転覆させる必要がある″
と正当化しているのです。

 このブッシュ政権の対応をEU諸国や中東諸国の政府は強く批判しています。
ところが、小泉首相は、(「悪の枢軸」発言は)「テロ根絶にたいする強い意志の表れ」(2002年2月18日)と評価しています。しかも、小泉政権は、5月17日の閣議で自衛隊の派遣期間の延長を決定しました。また、すでに一部のマスコミでは、インド洋に派遣されている自衛隊艦船が、アメリカのイラク攻撃にむけた情報収集活動を行っているという報道もされています。
このように小泉政権は、アメリカのイラク攻撃にたいしても積極的に協力しょうとしているのです。
 
 しかし、現在インド洋に派遣されている自衛艦は、「テロ対策特措法」にもとづいて派遣されており、自衛隊の活動は「後方支援」と称する兵站任務に限られています。小泉政権は、これでは不十分とみて、自衛隊が米軍と一緒になってイラク攻撃を行うことを可能とする、そのために有事関連三法案の制定を急いでいるのです。

2.「朝鮮半島有事」「台湾海峡有事」を想定しての日米共同作戦準備
 
 また、すでに述べたようにブッシュ大統領は、イラク・イランと並んで北朝鮮をも「悪の枢軸」と烙印しました。そもそも、冷戦終結以降アメリカは、ことあるごとに北朝鮮の「脅威」をあおり、いわゆる「核兵器開発疑惑 (1993年から94年)の際には、アメリカが北朝鮮にたいする武力攻撃を現実的に準備していたともいわれています。そして、いまも「テロ支援国家」と規定して「脅威」をあおっています。

 さらに、ブッシュ政権は、中国にたいしても警戒感を高めています。とくに、台湾が中国からの独立を宣言すれば、これを許さないために中国が台湾にたいして「武力攻撃」をかける、この中国にたいしてアメリカが「武力攻撃」を加えることを考えているといわれています。
 
このような、「朝鮮半島有事」や「台湾海峡有事」を想定して日本政府は、アメリカと一緒に「武力行使」を含む軍事行動を展開できるように、いま有事関連三法案をつくろうとしているのです。

侵略戦争をもできる「普通の国」への脱皮

 いまアメリカは、ユニラテラリズム (単独行動主義) にもとづいて自国の権益を世界に貫徹し、これにしたがわないものは軍事力でおさえこむことを戦略の基本にしています。そして、この世界支配を行うためにアメリカは、日本にたいする協力を求め、それに積極的に応えようとしているのが小泉政権です。そのためにいま小泉政権は、有事関連三法案の制定を急いでいるのです。
 
 小泉政権は、アメリカに協力することが日本の 「国益」 にかなうことであり、同時に、「テロ根絶」の名のもとにアフガニスタン戦争に参戦したいまが、戦後歴代の日本政府がやろうとしてもできなかった、海外での武力行使ができる「普通の国」になるチャンスと考えているからです。
 
 昨2001年10月からアメリカは、9・11事件にたいする「報復」としてアフガニスタンにたいする無差別爆撃を開始し、多くのアフガニスタンの人たちを殺してきました。また、パレスチナでは、アメリカのバックアップを受けたイスラエル・シヤロン政権が、イスラエル軍を使ってパレスチナを占領し、ジェノサイド(皆殺し)を 行っています。
 これにたいしていま、中東諸国をはじめとした多くのイスラム民衆が反米・反シオニズムの闘いにたちあがりつつあります。それは、アメリカによる中東をはじめとした世界支配を大きく揺るがすものとなっています。
 
 しかし、このアメリカの世界支配の揺らぎは、同時に、石油資源のほとんどを中東に依存し、また、特に1980年代後半以降に日本企業の海外進出を飛躍的に行った日本にとっても、日本の権益(石油資源の安定的確保や海外に拡大した日本企業の権益)を脅かすものと政府・支配層は考えているのです。それゆえに小泉政権は、アメリカが主導した安定的な世界支配を維持するために、アメリカに積極的に協力しようとしているのです。しかし、これまでは「平和憲法」とそれを守る国民の反対運動によって自衛隊が海外に行って「武力行使」することはできませんでした。
 ところが、昨2001年11月に「テロ対策特措法」を制定したことにもとづいて自衛隊艦船をインド洋に派遣し、戦後初の日本の参戦を果たした小泉政権は、いまが自衛隊が海外で武力行使のできる「普通の国」に飛躍させるチャンスととらえて、有事関連三法案を制定しようとしているのです。

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